十人十色の個性的な建築家にアレコレ話を聞いてみたら、その人の人柄がわかるハズ。そして、「どの建築士に頼めばいいのかわからない問題」も解決するかも。
そんな思いから始まったのが、大分の素敵な建築家さんに13の質問をする本シリーズ。第3回目の建築士は渕智子さん。現在はフリー、以前は設計事務所に勤めていた渕さんに、お話を聞きました。
渕智子(ふちともこ)39歳です。
子どもの頃はゲームが好きでした。特にドラクエ4は馬車もあるし人も多いし、登場人物のストーリーが深堀りできる感じが好きです。音楽もいいですよね。ゲーム音楽をかけながら仕事することもあります。
ゲーム音楽ですか。楽しく仕事が進められそうですね。今でもゲームしますか?
少し前はMOTHER2をやっていましたね。
Nintendo Switch Onlineに入ってればSwitchで遊べますもんね!
あと、本は子どもの頃から推理小説が好きで、シャーロック・ホームズや赤川次郎など図書館にあるものを読んでいました。外で遊ぶのもすきでした。
何事にも興味が湧いちゃう感じ、嫌いじゃないよ。
漫画も昔から好きです。『スラムダンク』にハマって中学はバスケ部に入りました。『釣りキチ三平』も好きで、実際に魚釣りにも行きましたよ。今は『ダンジョン飯』『大奥』『きのう何食べた?』など、読んでます。
我々の世代に『スラムダンク』は外せないですよね。
『スキップとローファー』も、イイぞ。
猫も大好きです。実家には、おしょん、おひょい。事務所にはチャ、シロがいます。
温泉や郷土玩具も好きです。
郷土玩具って、またシブい!
お漬物、じゃこ天、鶏のからあげ、シナモンロールです。
これまたかなりシブめのラインナップ!つまみだな。
お酒が好きでビールを毎日飲むので、つまみが多くなっちゃいました。漬物は自分で漬けたり、旅先で買ったり。今はなき「吉四六漬け」が好きでした。
「吉四六漬け」、僕も好物でした!
おいしかったですよね。からあげは、やっぱり竹田の「丸福」ですね。衣がおいしくて。
わかる!!あれはたまらん!
オルタナティブロック、インディーロック、ブリットポップ、エレクトロニックなどをよく聴きます。特に好きなバンドはRadiohead。他にもTravis、Hot Chip、The Musicなどです。
洋楽が多いですが、聴き始めたきっかけはなんですか?
基本的にロック系が好きで、ビートルズがきっかけです。中学生の時に音楽の授業で聴いたのが初めて。友人の父親が持っていたベスト盤を借りて、カセットに録音して聴いていました。
オリジナルカセット、作りましたよね。
CDもよく借りていました。ライナーノーツを手掛かりにして、他のバンドを追いかけましたね。映画のサントラも好きです。
小さい頃、どこかで住宅の設計図を見て「こういうものを描けたらかっこいいなぁ」と感じたことが最初のきっかけです。本屋で「カーサブルータス」を読み、コルビジェの特集を見てすごいと思ったのも印象に残っています。
ものづくりに憧れて、パソコンを使って図面を描くのがカッコいいと思い、高校進学で工業高校の建築科を選びました。ただ目標なく勉強するのって、苦痛じゃないですか。だから「建築」という目標が欲しかったんです。
高校生までと、大学卒業後しばらくは実家暮らしでした。普通の田舎によくある、普通の家です。自分の部屋の窓から見る夕焼けが好きでしたが、夏場の暑さに耐えた私は偉かったですね。
夏の西日はキツイ。
大学生の時は学生寮に住んでいました。狭い部屋をいかに居心地よい空間にするか、みんな試行錯誤を重ねるんです。机とベッドは備え付けなので、ベッドを解体してみたり、仕切りをつけてみたり。でも、ベッドは解体せずベッドとして使うのが正解でした。
睡眠はくまにも人間にも大事なんだなぁ。
そうですね。そういえば学生寮は岩手と北九州、それぞれ2年ずつ過ごしました。岩手では冬の夜が早くて、朝は6時ですっかり明るくなります。日の出日の入りが大分とはだいぶ違うので、不思議でした。
実家は由布市の庄内、不便ですが好きな場所です。田舎が好きで、稲刈りなどの農作業も息抜きになります。
イチオシというか、憧れている建築家は中村好文さんと、堀部安嗣さんです。中村好文さんの建築は細部まで細かく設計されていて、普通な感じにみえるけれど真似できない。特別なことや奇抜なことはしてないのに、心に響きます。堀部安嗣さんも細部までキレイで、佇まいがカッコイイです。
シンプルで素敵。でも細部までこだわりぬいている感じがスゴイですね。
どちらも奇をてらったことをせず、考え抜かれていますよね。少しでも近づけたらいいなと憧れています。大分の建築家の方々にはいつも刺激をいただいており、個人的に推したい人が多いです。
自分や家族にとって、一番の優先事項・譲れないものは何か?を考えることです。なぜ家造りをするのか、直感的にどんな家が欲しいのかが大事。間取りだけではなく、耐震や断熱などの性能も重要ですね。今はネットに情報があふれているので、つい目移りしてしまうんですよ。
ネットでカッコいい家を見たら、やっぱりコレも取り入れて、あとコレもやってみて……と、いくらでも注文しちゃいそう。
そうなんですよ。参考事例がたくさんあるから迷ってしまうんです。限られた予算の中で、すべての要望を満たすのは難しいです。ぶれない芯を持っていれば、その人らしい、家族らしい家づくりができると思いますよ。ですから「これ、いりませんよね」と、思ったら言うように心がけています。
それ、すごくありがたいですよね。本音を言ってくれたり、素直な意見を聞けるのは嬉しいです。
カウンセリングして、施主自身が気づいていない要望を読み解き、形に表すことを大事にしています。とても難しいんですけどね。
具体的にはどういうことでしょう?
そうですね、例えば家事動線を気にされる方がいて、よくよく話を聞いてみると「来客の時に見せたくない」という本音が隠れていたり。ご本人も気づけていない、言葉にできないところを見つけて引き出すのが、大切ですね。
山もしくは湖畔が望めて、猫と快適に過ごせる家。ひっそりとした小さな家が理想ですね。
実家がある庄内のような、自然の豊かな場所がいいんですね。
そうですね。山が見えないところは絶対に嫌です、花粉症ですけど。
まさかの花粉症!!
毎回楽しいです。飽きることなく、ずっとやっていますから。家を作る過程で、施主さんが喜んでる姿を見ると嬉しいし、よかったなと思います。こちらから提案して喜んでもらえるのも楽しいです。
逆に、今までにあった珍しい要望ってなんですか?
南向きはいらないから、東向きの窓だけ欲しいとの要望がありました。朝日をガンガンに浴びたい、と。
予想外の要望ですね。
同じ家や家族、建物はひとつもありません。毎回初めての要望が出てきます。どうやって解答・解決して設計するかを考えるのは、新鮮で楽しいですね。
旅行に出かけるとついつい建物に見入ってしまう
(渕さん撮影)
出かけた先で、建物の細かい納まりや素材に目が行って観察してしまうので、同行者を飽きさせることです。家族と一緒だと、いつも「早く中に入ろう!」と急かされます。
それ、だいたいの建築士さんが言っているので「あるある・オブ・あるある」なんですね。
そうですね。旅先を決める時も見たい建築物優先なので、同行者に楽しめないと言われることも多いですね。逆に同業者と行くと、とても楽しい!
ちなみに、この写真は鳥取県にある「三徳山三佛寺投入堂」。この奥院を見るためには、ちょっと命がけの登山が必要なんですよ。同行者は同業者か、社寺建築に興味のある人しか一緒に行ってくれないと思います(笑)
以前の職場で、ダイニングに地窓(床に近い窓)を設け、そこに植栽を計画した住宅があります。食事中やひと息つくときに眺められ、落ち着く場所となり好きでした。隣の家が近く緑がない場所でしたが、ダイニングにいると植物が視界に入り心地よかったですね。
ふとした瞬間に植物が見えるって、気分が落ち着くよね。
キッチンと洗面脱衣室、クローゼットへの動線が一直線の住宅は、家事動線が短くていろいろな方におすすめしたい間取りです。
一直線とはどういうことでしょう?
小さなお子さんがいる働く女性からの要望で設計しました。「洗濯する→室内干しする→そのままクローゼットにしまう」この流れが一直線なんです。家事動線は大切なので、生活の流れに合うように配置できたらいいなと思います。
なるほど、それはスムーズに家事が片付けられて便利!
家事は毎日のことだから、効率的にできるのは嬉しいですよね!
渕さん、お話しを聞かせていただき、ありがとうございました。
ありがとうございました!
渕さん、お茶目な一面をのぞかせつつ、一つひとつ丁寧に返答いただきました。設計事務所に勤めていたからこその視点をお持ちの建築士さんです。
もっと詳しく質問してみたい、すごく気になるからお話をしたい!と思ったあなたは、ぜひ下記からご問い合わせください。お待ちしています!
大分の建築士さんに聞きたい13のこと|別の記事はこちらから